1個を取り出し、新垣に向かってそれを投げたら、キャッチしてくれたようだ。



「ありがとう!」



その声の響きから、喜んでくれたことを感じ取った。


公園を後にして、さっき宙に消えた“ありがとう”の音をもう一度聞きたいと願うけれど、それが叶わないもどかしさが、自転車のハンドルを握る手に力を込めさせた。



口の中に広がる甘酸っぱいグレープフルーツ味の飴をガリガリと噛んで食べながら、夕陽に向かって自転車で風を切って走った。


もうすぐ、新垣と会えない長い夏休みがやってくる。



中田Side fin.