「あんま頑なすぎると、チャンス逃すぞ」


千田はそう言って、機会を俺の手から取り上げて机に置き、肩を組んで身を寄せる。


「お前、アイドルの曲なんて今まで歌ったこともなかったじゃん。それなのにどうしたんだよ」

「...別に嫌いだったわけじゃねえから」


あの修学旅行の時に中庭で聞いたことは誰にも言っていない。


ただ新垣がファンらしいということは千田と共有済みだ。


「ふーん。新垣が好きなグループの曲だからかと思ったぜ」


ニヤニヤとしながらしつこく迫ってくる千田を押し返した。