チャイムが鳴る直前に、森川にプリントを返しに行った。


「サンキュー、助かった」

「良かった。また何かあったら言ってね」


森川に小さく頭を下げてから、自分の席へ戻ろうとしたら「あのさ」という声が再び聞こえてきて足を止める。


「その髪型、似合ってるよ」


森川は、目を細めて笑った。


その瞬間、正直ドキッとしたが、何食わぬ顔をして頭を下げた。


あんな風にさらりと、新垣に言われたかった言葉を他の女子から告げられるとは、思ってもみなかった出来事に戸惑った。



その日の放課後、所属している野球部が休みということもあり、千田と2人でカラオケに行った。


俺がShooting starのバラード曲を歌い終えたところで、千田は口を開く。



「そんなに好きならさあ、さっさと告っちゃえよ」

「何だよ、急に」


動揺した心を悟られないよう必死になって、番号検索する手元の機器を弄る。