まだ痛む頭を手で押さえていると、前の席の桜ちゃんが苦笑いしながら振り向いた。


「大丈夫?」って気にしてくれている。


「呆れちゃうよね。でもそれだけ、未紗のことが好きなんだと思うよ」


「え?」



ポカンと口が開きかけたが、次の瞬間、顔が思いっきり歪んでしまった。


そんな私を前にしても、桜ちゃんは落ち着いた表情のまま言った。


「好きな子には、優しくしなきゃいけないのに、自分の気持ちを上手く表現できないんだろうね。だからさ、今回は大目にみてあげてよ」



桜ちゃんは中田と幼稚園から一緒だからか、まるでお母さんのような口調で言って、前に向き直った。



ちょっと待ってください。



中田が私のことを、“好き”とか、あり得ないでしょう!



「妖怪ツインテールのバァーカ」



森りんから受け取ったプリントを片手に持って、小声でつぶやきながら横を通り過ぎて行った。


私の口からは、大きなため息が漏れた。


まず第一に、この人に好きという感情があるのかどうか、そこが疑問である。