「それがもし行き場のない思いなら、今は自分のやるべきことにその強い気持ちを入魂するのもいいかもしれないね!」

「というのは、どういうこと?」


ちょっぴり難しくて、首を傾げた。


「未紗ちゃんだったら、演劇活動とか、勉強とかかな。誰かを想う気持ちで苦しくなったら、自分が一生懸命になれる他のことに力を注いでみるの」


「あー!」


「口で言うほど、簡単なことではないかもしれないけどね」


私は納得をして頷いた。


やっぱり、森りんはすごい。


色んな事にヒントをくれる。


感動して横顔に目を向けると、彼女は遠い目をして淡々と言う。


「誰かを想うって限りなく深いことだなって思う。傍から見ただけじゃ、その人がどのくらい辛いかなんて分からないし。だから難しいね」


その時、彼女の中に存在する壁を見てしまった気がした。


ここから先は自分以外誰も入れない。


立ち入り禁止の場所が、彼女の中にはあるのかもしれない。