森りんは不意に言葉を紡ぐ。



「誰かを想う気持ちには休みが無いもんね」


生ぬるい風が吹いて、髪の毛をなびかせた。


「苦しい時とか、辛い時って休みたくない?」


そう聞かれて、うんと即答した。


「だけど“好き”っていう気持ちは、休みがとれないなあって思うの。365日、時に366日、途切れない」


「森りん、かっこいい。詩人みたい」


「アハハ。今のは、未紗ちゃんの気持ちを代弁してみたの」



今までそんなこと考えたこともなかったけど、確かにそうかもしれない。


溜まった物を吐き出すかのように言う。


「あーあっ。出来ることなら1回休みたいなぁ。そうしたら、少しは楽になるのかな」


森りんは「どうかな」と言って、眼鏡の奥の瞳を細めて笑った。