しかし、その姿は消えない。


物陰に隠れたまま、話しかけるべきか迷っていた時、ちょうどスタイルの良い男が入店してきた。


男は帽子を深くかぶり、サングラスをして、どこか俺らとは違う強いオーラを放っていたから、つい目で追ってしまった。


俺の横を通り過ぎ、強い香水の匂いを残して、新垣がいる方向へと歩いて行った。


そして2人は、どうやらむすびの譲り合いを始めたようだ。


新垣に話しかけるタイミングを逃した俺は、お菓子を眺めるふりをしながら、チラチラと様子を伺った。


少しして男はくるりと身体の向きを変え、なにも買わずに、足早に店を出ていってしまった。


窓から、店のすぐ前に止まっていた車に乗り込んで去っていくのが見えた。


ハッとしてむすびコーナーに目をやると、そこにはもう誰もいなくて、新垣はレジの方へと向かっているところだった。


出口付近で店員に止められていて、手に持っていたむすびをカウンターに置いて外へ行ってしまった。


俺は追いかけようと、目当てのお菓子を急いでレジに持っていき、会計を済ませて出た。