そして、中田さんご夫妻の家の最寄り駅に向かう電車の中で、お母さんから届いたラインを開いた。


“森りんと、中田に何卒よろしく”



その一文に添えられた写メは、3人が高校生になって再会した日に撮った、とびっきりの笑顔の1枚だった。


お母さんは真ん中にいて、おめでとう!の文字入りのデコレーションケーキを嬉しそうに持っている。


その隣にいる、森りんこと律子さんは、まん丸に膨らませた緑色の風船を持っている。


よく見たらそれには、黒のマジックペンでカナタさんの似顔絵らしきものが描かれていた。


良い感じに特徴を掴んでいるなあと、あたしは微笑ましい気持ちになった。


Shooting starは5年ほど前に解散してしまったけれど、メンバーは個々に活動を継続していて、カナタさんは俳優業に専念している。


あと3駅で到着することをドアの上にある駅名が表示されるスクリーンで確認した際、壁に貼ってある広告の中で微笑む人物が目に入ってドキリとした。


そこにいたのは、かつてお母さんが恋した人だったから。


新たな出発を見守ってくれているみたいだ。


“またね”と心の中で告げて下車し、長いホームに入り込む午後の光の中を歩き出す。


線路わきに見えた桜の木の花びら達が小さく揺れて、風にうたった。


Fin