店の外でもう一度辺りを見回してみたけれど、彼の姿はどこにもなかった。
当たり前か…。
でもでも、さっきのが本当にカナタだったとしたら、会話しちゃったんだ。
「うわぁ、どうしよう!」
さすが東京だ。
興奮をおさえられなくなる前に家に帰ろうと駅に向かった。
「もしかして、カナタもおかかが好きなのかなぁ?」
つい独り言を言ってしまったり、顔がにやけたりする。
「誰かに連絡して言いたいけど、ダメッ。家に帰るまでの辛抱よ...」
「うっせぇなぁ。何つぶつぶ独り言いってんだよ。妖怪ツインテールめ」
次の瞬間、急に聞き覚えのある声が耳元ですると思って横を向いた。
並んで歩いているその人物が、中学で同じクラスのお調子者男子、中田(なかた)だということが判明し、驚きでよろけそうになった。
「あんた、どうしてここにいるの?!」
「はんっ。びっくりしたろ?」
「びっくりするに決まってんでしょ!」
今までレッスン終わりにコイツと出会したことなんてなかった。

