「やっぱ無理!!」




くるりと向き直った私に向けて母は言った。



「そんなこと言ってる場合!?一言でも、話すために来たんでしょう?」


「そ、そうだけど。…う"ぅ~」



色々と言い合っているうちに、背後でチーンというエレベーターが開く音がして、彼は上階へと行ってしまった。



力が抜けたように、再び私はソファーに座り込んだ。




「お母さん、声が大きすぎるよ。絶対怪しい人たちだと思われた」


「ごめん、興奮しちゃった。それよりどうするの?整体、何階だっけ?」


「5階…」


「はい。じゃあ荷物持って行くわよ」


母の言葉に大きく頷いた。


こんなとこで迷うために来たのではなく、一言でも話したい意気込みで、やってきたのだ。


後ろで管理人の視線が私たちに向けられていたことには気付かず、私たちは2つある内のもうひとつのエレベーターに乗り込んだ。