結局人生ゲームはゲット出来なかったが、森川は満足そうに貯金箱を胸に抱きしめた。


「ありがとう!嬉しい」


たったこれだけのことで、そんなに感動するのか?


不思議だと思いながらも、目の前の笑顔に俺の気持ちまでも満たされていた。


「良かったよ。喜んでもらえて。人生ゲームは悔しかったけどな」


下を向きながらふるふると首を横に振って、顔を上げた。


「これ大切にする」


真っ直ぐ俺を見つめる、眼鏡の奥の瞳がまた潤んでいるように見えたのは、屋台の明かりが眩しすぎたせいだろうか。


俺は何だか照れくさくて、鼻の頭をかいた。


「そういえば、あいつらどこ行ってたんだろうな。姿見当たらねえな」


話題を変え、辺りを見渡したが、見覚えのある顔はいなかった。


とりあえず、今は何かを話していなければ落ち着かない。


「なんか食べるか?」

「そうだね。何が良いかな?」

「そうだなー...」


目に見える看板は、フランクフルトやお好み焼き、焼き鳥だ。


今食べたいのは....



『お好み焼き!』


ハッとして俺たちは顔を見合した。


以心伝心のように、見事に重なった声は一瞬止まって、笑い声に変わった。


森川は肩を震わせて笑っている。


「行こうぜ」


笑いは止まらないままだったが、俺らは動き出した。