森川は、屈託のない笑顔を向けた。


三星たちが歌い終わったあと、再び屋台を楽しむことになった。


俺の隣を歩いているのは森川だ。


人混みに押されながら、射的の場所を目指す。


「あっ、ごめん...」


トンッと肩が触れ合った瞬間、申し訳なさそうに言った。


「いや平気だけど」


森川は平気かな。


一瞬あった目はすぐに外されて、森川は真っ直ぐに前を向いた。


そして少しづつ進んでいく。


「見えて来たよ!」


森川が看板の方を指さした次の瞬間だった。


華奢な身体が、俺の腕の中にいた。


どうやら誰かに横からどつかれ、体制を崩してこちらにやってきた身体を反射的に俺がキャッチしたみたいだ。


状況を理解するまでに少し時間が必要だった。


時間は止まるはずが無いのに、時間の枠の外へと出ていったような感覚になった。


そして、大勢の人の動きは一時停止して、まるで俺たち2人だけにスポットライトが当たって動いているような瞬間に出会った。