「あ、どうぞ」 私はそう言って、むすびを差し出した。 「俺はいいよ。君が食べて」 「え…っ」 再び聞こえた声にあたしの身体はビクンッと脈打つように反応して、息を飲んだ。 似てる。 やっぱり、この人は本当にカナタかもしれない。 けれど、気づいた時には、彼は私の前から消えていて、辺りを見回すとちょうど店の外へ出ていく背中が見えた。