むすびの陳列棚を前に迷った。
エビマヨも梅も、明太子もどれも美味しそうに見える。
その隣のおかかも良いかも。
おかかは残り1つだ。
“残り物には福がある”だもんね。
よし、ひとつはこれに決めた!と勢いよく手を伸ばしたら、丁度他にも同じものを選んだ人がいたようで、指先同士が触れ合った。
これってよくドラマとかである、運命の出会い的な感じなのではないですか!?
一気に期待が膨らんでいく。
顔を上げて相手を見る前に、頭の中は妄想劇場だ。
「あ、ごめん」という声が頭上で聞こえた。
きた、イケメンボイス!
そして見上げたその先には、サングラスをかけ、帽子を深くかぶっている、背の高い怪しげな男がいた。
強い香水の匂いがする。
でも、この人どこかで見たことあるかも。
知っている人のような気がしてきた。
まさかね。

