「あ━━━━!!フルート落ちそう」



目の前で響いた、咲の鋭く大きな声にはっとした。



もう少し遅かったら、手から落ちてしまうところだったらしい。


危機一髪のところで、咲が手で支えてくれ、無事だった。



「しっかりしろよ。定期演奏会もうすぐなんだし、男のことでボーっとしてる場合かよ」



男のことって、別にそんなんじゃ…


反論したくなったけど、間違いではないから言い返せない。




「そうだよね。今は練習に集中しなきゃね」




自分に言い聞かせるように言ったんだ。



秋の定期演奏会はもうすぐそこだ。