私は胸の中に溜まったモヤモヤした気持ちを吐き出すように言う。
「何かね、私って少しのことですぐに落ち込んじゃって、そこからすぐに抜け出せないの。ずっと、そのことに囚われちゃうんだ」
「そうなの?」
「うん。レッスンの時に先生に少し厳しく指摘されたくらいで、ものすごい落ち込んで。それで、少し前からレッスンにも足が向かなくて。当分前からオーディションも、仕事の話もこなくなっちゃったし。私には、やっぱりこの世界は合わないんじゃないかって思ったの」
養成所に所属するにあたっての費用を1年間、母に支払ってもらったことには感謝している。
だから、この中途半端な気持ちで続けることは出来ないって思ったのも、正直なところだ。
「でもさ、うちは未紗ちゃんなら大丈夫だって思うよ。可愛いし、優しいし、頑張り屋さんだし。まだ諦めるには早いんじゃ…」
「ありがとう。でも、ダメなんだ」
森りんの言葉を遮るように言った。
「優しさだけじゃ、この世界では生きていけないんだよ、きっと。少しだけだけど、憧れていた世界に入って、何となくそれが分かったような気がするの。私の場合、もっと強くならなきゃいけないの。本当は誰にも負けないくらい強くなりたい。でも、なかなか難しいね」
校庭の木葉を揺らす風の音を聞いて、高鳴る胸が少し苦しかった。
この感情を、風が連れ去ってくれたら良いのにな。

