「では」
イルマがパチンと指を鳴らす。
途端に大きものが動く重低音が辺りに響きだした。
いよいよ扉が開く。
そう思うといくら冷静になろうとしても気がた昂った。
早く開け。

だが、音だけが響いて一向に扉は開かない。

「…ねぇイルマさん?この扉いくら大きくても開くの遅くない?」
若干拍子抜けの状態に、明日香が首を傾ける。

「…あいつは何をしてるんだ」
「は?」
「いやっ失礼しました。大丈夫です。」
再度イルマが指を鳴らす。
石のように動かなかった扉は軽やかに開き出した。
「大変失礼しました。」
深々と頭を下げるイルマをよそに、明日香は自分が通れるサイズ程に開いた扉に夢中だった。中からは白い光が溢れだす。
「わ、眩しっ」
思わず腕で目を覆った。警察学校て訓練した目眩ましの光よりも眩しい。つまり経験したことがない。
腕越しにも光りが刺さってくるように感じられた。
「イルマさん?これ眩し過ぎない?」
「…重ね重ねすみません。経費の無駄だからやめろと進言してるんですが…。」
夢の国でも経費とかあるんだ…。なんか大変そうだな。
「次に人が来る前にやめてもらえたらいいですね。」
「ありがとうございます。…では古賀明日香さん。ようこそ夢の国へ。」
話している間に扉はすべて開いたらしい。
イルマの声に恐る恐る目を覆う腕を下ろした。

「………すごい。」
目の前に広がる景色に明日香は息を呑んだ。