荷物を整理したり、先生と話していたら。
あっという間に夜になってしまった。

先生の家に泊まるのは初めてじゃないのに、なんだか緊張してしまう。



「唯、どうした。固くなって。」


「い、いえ、別に。」



意識するとさらにドキドキして、顔が上気するのが自分でも分かる。



「熱でもあるの?」



そう言って、先生が前髪の下に手を滑り込ませる。

それだけで、鼓動が大きく鳴り響く。



「大丈夫、です。」



やっとのことで、それだけ口にする。



「前みたいに、このベッドを使って。私はあっちで寝るから。」



先生が指差したのは、小さなソファー。



「私があっちで寝ます!せんせ、陽さんはこっちで!」


「唯をソファーで寝かせるなんて、私が許すと思う?」


「だって……。」



すると、先生はいつもの笑みを浮かべた。

甘々モードに入るときのあの笑み。



「じゃあ、一緒にベッドで寝ようか。」


「へっ!」



不意打ちに、再び顔が真っ赤になってしまう。



「唯、変なこと考えたでしょ。」


「ち、ちがいますっ!」



どんどん真っ赤になっていく私を、余裕の笑みで面白そうに見つめる先生。



「嘘だよ。緊張しすぎ。」



そうささやくと、先生はソファーの方に歩いていく。

少しだけほっとして。
でも、なんだか物足りなくて。

私はベッドにもぐり込んで、悶々とする。



その時急に、すぐ近くで先生の足音が聞こえて、私の心拍数は最大級になった。



「電気、消してもいい?」


「はっ、はいっ!」



場違いな大声で答えて、ふと布団から顔を出す。

すると、先生は笑いながら私に顔を近づけた。



「どうしたいの。」



その一言に、燃えるように熱い頬をどうすることも出来なくて。



「寝たいですっ!」



裏返りそうな声でそう言った。



「ああそう。おやすみ。」



何でもないといった声で、先生は言う。

そして、電気のスイッチに手が伸びる。



「寝たい、です。……一緒に……陽さん、と。」



思わず零れ落ちた言葉に、先生が振り返る。



「一緒に寝てほしいの?それだけ?」


「はいっ!」



返事をすると、先生は笑った。



「なかなか酷なことを言うね、唯も。」



そう言うと、枕元の電気だけ点けて、先生は私と同じベッドに滑り込んだ。