「唯!夕ご飯よ!」


「うん。」



母に呼ばれて、食卓に向かう。



「わあー!」



そこに並んでいた料理を見て、私は思わず涙をこぼしてしまった。

小さい頃、私が好きだったものばかりだったんだ。


まだ父が生きていて、優しかった母。

私はいつも母に甘えて、おんなじものばっかりせがんで。


母はとても、料理上手だったんだ。



「唯、これ食べて元気出しな!」


「……うん。ありがとう、お母さん。」


「男は先生だけじゃないのよ!」


「ふふっ、うん。」



母が言うと、その言葉には重みがあって。

なんだか笑ってしまう。



「そうだよ、唯ちゃん。元気出して。」


「ありがと、前園さん。あっ……」


「いいよ、前園さんでも、准一さんでも。無理してお父さん、なんて呼ばなくていい。」


「……じゃあ、准一さんって呼ぶね。もう少し、時間をください。」


「うん。大丈夫。」



寂しそうに微笑んだ准一さんの顔を、真っ直ぐ見られなくて。

私は、目の前にある大好物のオムライスをつついた。


そのいい香りを、胸に吸い込んだ時だった。



「っ、」


「唯、どうしたの?」


「どうした!」



どうしたんだろう。

突然、吐き気に襲われて、私は口に手を当てたんだ。



「唯、」


「あは、どうしたんだろう、私。」


「気持ち悪いのか?」



首を振るけれど、また襲ってくる吐き気。



「ストレスか?精神的なものじゃないのか?」



慌てたように准一さんが言って。

母は、その言葉を否定した。



「違うよ。」


「え?」


「もしかして、もしかして、唯―――」



その後、母に連れられて縁側に行って、衝撃的なことを教えてもらったんだ。