それなのに、先生。
春を過ぎて、夏になる手前の梅雨の頃。
先生はいつも、どこか遠くを見ているようになったね。
時に、視線は私を通り越えて、私の知らない景色を眺めているようだった。
どうして急にそうなってしまったのか、私にはちっとも分からなかった。
先生が寂しそうな顔をする度に、どうしたらいいか分からなくなった。
「陽、さん。」
「……。」
「陽さん?」
「……ん?呼んだ?」
きょと、とした目で振り返る陽さん。
その目には、どこか夢を見ているような、そんな曖昧さがあって。
「いえ……。何でもないんです。」
結局、そのわけを尋ねることすらできない私。
そんな自分が、臆病で大嫌い。
先生は、やっぱりふいに私の前から姿を消してしまいそうで。
怖かったから。
先生の、その曖昧な優しさが、何よりも怖かったから―――
春を過ぎて、夏になる手前の梅雨の頃。
先生はいつも、どこか遠くを見ているようになったね。
時に、視線は私を通り越えて、私の知らない景色を眺めているようだった。
どうして急にそうなってしまったのか、私にはちっとも分からなかった。
先生が寂しそうな顔をする度に、どうしたらいいか分からなくなった。
「陽、さん。」
「……。」
「陽さん?」
「……ん?呼んだ?」
きょと、とした目で振り返る陽さん。
その目には、どこか夢を見ているような、そんな曖昧さがあって。
「いえ……。何でもないんです。」
結局、そのわけを尋ねることすらできない私。
そんな自分が、臆病で大嫌い。
先生は、やっぱりふいに私の前から姿を消してしまいそうで。
怖かったから。
先生の、その曖昧な優しさが、何よりも怖かったから―――