家に帰って、ガチャリ、とドアを開ける。



「ただいまー、たま、シロ!」


「にゃーん。」



尻尾を立てて、たまが歩み寄ってくる。

先生は、そんなたまを抱きかかえて、頬ずりしてる。



「あれ、シロは?」


「あれ?」



いつもなら、たまより先に飛びついて迎えてくれるシロ。

それなのに、今日はシロが出てこない。



「シロ?」


「シロ!!」



先生と顔を見合わせる。

両手に荷物を持ったまま、リビングへ向かった。



「シロ!」



呼んでも、その白いかたまりは視界のどこにもいない。

ソファーの影にも、寝室にも、お風呂にも。



「いないね。」


「シロ、まさか……。」



先生と、玄関の扉を見つめた。

たまがいつも出入りする、ネコ用の勝手口。


最近大きくなったシロは、もうあそこを通れないと思っていたのに。



「帰ってきますか?」


「いや……、そんなふうにはしつけてないからね。」



毎日散歩に行くから、頭のよい子ならこの近くの道は覚えているだろう。

シロは、一体どこに行ってしまったんだろう。



「たまはいつも自由に歩いてるから、構わないけど。シロの場合、見付かると保健所行きかもしれない。」


「え、そんな!」


「それに、車にひかれる可能性だってあるし。」


「陽さん、探しに行きましょう!」


「そうしよう。」



そう言って、先生とふたり、入ったばかりの玄関から再び外に出た―――