その後は、夕方まで近くの公園でまったりしていた。

先生となら、どこにも行かなくても幸せだって思った。



「あの犬、可愛いね。」


「どれですか?」


「ほら、あそこにいる真っ白な。」


「あ、可愛い。」



見ていたら、ちょこまかとした足取りで、こちらに向かって駆けてくる。

子犬だった。

雑種だろうか、でも、垂れた耳とふさふさした尻尾がたまらなくかわいい。



「おいで。」



先生が手を差し出すと、子犬は走り寄ってきて、先生の手をぺろぺろ舐めた。



「首輪してないね。」


「ほんとだ。」


「お腹すいてるの?シロ。」



先生は子犬に勝手に名前をつけて、愛しげに撫でる。



「捨て犬?」


「そうかもしれないね。」



先生が辺りを見回しても、飼い主らしき人は見当たらなかった。

それに、先生の手の匂いをクンクン嗅いでいる様子から、お腹が空いているんだと思えた。



「よだれだらけになるだろ。」



先生は苦笑する。



「暖かいから、しばらくは大丈夫でしょうか。エサとか、どうするんだろう……。」


「どうしようね。」



先生と、しばらく悩む。



「連れて帰るか。」


「え?」


「犬、好き?」


「大好きですけど、たま、いるし。」


「たまも元々拾ったようなものだから。それに、日中は好きにしてるし、大丈夫でしょう。」


「ほんとですか!」



真っ白なその犬に向かって、そっと手を伸ばすと、今度は私の方に向かって駆けてくる。



「シロ。」



呼ぶと、尻尾をぶんぶんと振って応える。



「うちにくるか?シロ。」



ニコニコと笑う先生。

本当に、動物が好きなんだなって思う。


こういう先生の優しいところも、私は大好きなんだ。

人間にも、動物にも、表裏のない優しさを分け与える先生のことが。



「荷物が増えたね。」



先生がシロを胸に抱いて笑った。

先生をひとり占めできる時間はもう終わってしまったんだと思ったけれど。

シロを家族に加えて、ここから作っていく歴史を思うと、私は嬉しくなってしまった。