そして、私の真後ろで止まった。




「そこで歌手やんねぇ?」




クルリ、振り返れば髪が宙に靡く。




私の目の前で黒が舞う。




風が止むと男は目を見開いた。




そして、喉でクツクツ笑う。




ひどく楽しそうに。




新しいおもちゃを見つけた小さな子供の様に。




「あの声を持ってる上に絶世の美少女とはねぇ」




その言葉に少しイラッとする。




その言葉は私が大嫌いな言葉。



私が私として見てもらえない証拠。