「私…辞めます。」
「な、何言ってるんだよ結乃ちゃん!結乃ちゃんが辞める必要なんて…。」
乾いた音が、部屋に響いた。
「翔…。」
翔が、私の頬をはたいた音だった。翔は、私が女子という事からか、私を殴る事はしない。代わりに、腹が立った時は私の頬をはたくのだ。子供の頃から、そうだった。
「頑張ってきたのは何のためだったんだよ!?こうやって譲られて、先輩のためになるとでも思うのかよ!?こんなの…先輩に失礼じゃねーか!」
そう言って翔は出て行ってしまった…。
「翔!」
私が呼び止めても、聞こえているのかいないのか走り去っていく。
「…結乃。」
先輩が私の肩にポンと手を乗せた。