「ここです。」
凰くんが立ち止まる。そこには、何の変哲もない家があった。表札には「宇佐木」の文字。オシャレなドアの上に小さく光るライトが、綺麗に見えた。
「…やっぱり緊張するな…。」
「大丈夫ですって、結乃先輩。今日は俺以外いませんから。」
「いや、そうじゃなくて…。」
男子の家に泊まるなんて、翔以外経験ないし…。しかも、その時もかなり小さい頃だったし…。
だがこの言葉は、心の奥に埋もれていった。何故なら…。
「どうぞ、先輩。」
凰くんの優しさが、私の緊張を柔らかくほぐしてくれたからだ。