「先輩!」
待ち合わせ場所の公園に行くと、凰くんがベンチで待っていた。月明かりが、夜の公園を照らしていた。
「ごめん、待たせちゃった?」
「いえ、全然。じゃあ、行きましょう。」
そう言うと凰くんは立ち上がり、私の手を握った。
「ひゃっ!」
自然な流れだったが、暗い所で手を握られたので、私は小さく悲鳴を上げてしまった。
「ん?どうかしたんですか?」
「あ、何でもないよ。」
凰くんは私の手を引いて歩き出した。凰くんの家までは、ここから十五分ほどで着く。長いのか短いのか微妙な時間だが、手を握られているという非日常的な感覚もあって、この日ばかりは一瞬に感じられた。