でも気を抜くと〝あいつ〟が出てきた。
途端ガラガラと何かが崩れ、それまでの気分をことごとく破壊してしまう。


あいつは今何をやっていて、何を考えているのだろう。


同じ空を見ているだろうか?
私のことをもしかして考えてるんじゃないか。


一度出てきたあいつはなかなか帰ろうとせず、コーヒー一杯で閉店までいすわる迷惑な客のように、いつまでもいつまでも会計をしてくれなかった。

これが現実ならたたき出してやるところだが、この喫茶店は私の心の中にあるもんだから、そうはいかない。
ほぼ24時間営業のようなものだ。


「閉店だから出ろ」

と、いえればいいのに。

あいつはほぼ常連で、私を苦しめた。