増田はまだ回復していなかった。
部活も休んでいるようだった。


私はそんな増田を見ていられなかった。
どうすればいいんだろう。

ある日、校門から出るとちょうど増田が前に見えた。


おい。


と、後からつついた。


「お、おう南雲か」
やっぱり元気がない。

しばらく並んで歩いたけど、増田は何にもいわなかった。


「腹減ってるか?」
私は聞いた。

「うん」


「しょーがないなー、のび太君」
「何だよそれ」
増田はちょっとだけ笑った。

「ラーメンおごってやるよ」

「ありがと」


私たちは〈熱風野郎一番星〉に入った。
のぞみに教えてもらってから、すっかり常連になってしまった私。


私たちは黙ってラーメンを食べた。
やっぱり美味いんだなこれが。

「増田、美味いか?」
「美味しい」


満腹になって店を出た。

一瞬手をつなぎたいと思った。
そしたらドキドキしだした。
途端、茜のことが頭に浮かんだ。

友情をとるか恋愛をとるか。

とても決められそうになかった。


私たちはぽつぽつ歩きだした。

「増田? 聞いてもいい?」
「いいよ」





好きな人いる?





…………





私はいえなかった。
答えを知りたいけど、知りたくない。



「増田、早く元気になって」
「うん」
「分かってる?私心配なの?」

「どうして?」
「だって、だって……。とにかく心配なんだよ」


「ありがと。ラーメン美味かったよ」
増田は角を曲がっていった。

私はそれを黙って見ていた。