暫くそうしていると、不意に彼が立ち上がり森の方へ向かった。

「…何処行くの…?」

問いかけた声は彼の耳には届かず、彼はどんどん森へと向かってしまう。

「ま、待って…っ」

今度は彼に届くように言うと、漸く彼は止まってくれた。


「置いて行かないで」


口を突いて出たのは、そんな言葉だった。

彼は頬を緩ませるとすぐ私のもとへ戻って来てくれる。そんなことに私は酷く安心して、思わず泣き出してしまった。