「マキ!おはよ!」


教室に入るといつもの元気な声が聞こえてくる。

彼女の名前は柚木 亜衣(ゆずき あい)。

私の昔からの友達。親友だ。


「おはよ、あい」


この高校も二人で同じ高校に入ろうということで受験した。

そんなに頭が良いわけでもない私でも入れたということは、大した学校ではないんだろう。


「あ、ゆき!おはよ~」


あいが声をかけたもう一人の相手は、女の子のような名前をした同じクラスの男子生徒。

鈴木 優貴(すずき ゆき)。

私の、好きな人。


「でっさ~それが超面白くて!」


あいはさっそく優貴に話しかけている。

それに眠そうに適当に頷く優貴。

私はそんなあいの性格が少し羨ましいと思う。

好きだからますます話せなくなるし、私はあいのような明るさというか可愛さは持っていないから。


「おーい、マキ、聞いてる?」



「え?ごめん。ちょっとボーっとしてた。」



ボーっとしていたというよりは、あの日のことを思い出していたのだけど。



「も~。マキ、最近なんか変だよ?」


そう言ってあいはまたさっきの話を始める。

さすがは昔から付き合ってきた仲だ。なかなか鋭い。


あの日のことというのは、私があいに優貴のことを聞いた日のこと。

あんなに仲良くしていれば、あいの好きな人というのはまさか…と不安になるのも当たり前。

色々悩みより本人に聞いたほうが早いと思い、思い切って聞いてみたら、答えはnoだった。

『だから、私の好みはクールで知的な人だって言ったでしょう!あんなボサッとしたやつなんか誰が好きになるかっての!』

そんなことを言っていたっけ。