なんだ、この展開は。どんな晴れの日でも傘を持ち続けて馬鹿にされ続けたあたしの思いが報われる日がついに来たと拳を上げたのがいけなかったのか。それとも我ながら不細工な笑い声がいけなかったのか。

あたしはとりあえず、目の前を通過した車に、ウゲウゲと悪態をついてタオルをくれよと、もう形も見えないであろう車に文句を言った。

雨は勢いを増して、何と戦っているんだと聞きたくなる。青空が恋しい。カムバック、夏の入道雲。
もう意味の成さない傘を置いて、雨に濡れてワカメのように張り付いた髪を片手で絞った時、


バタンっと扉の音がした。

そう、もう通り過ぎてしまっただろう、と思ったのに。


予想外だ。


とっくに通過しても良いはずの車はあたしの地点から五メートル程先で、停まっていた。

ワカメの隙間から視線を上げるよりも先に、ザァザァと降り止まない雨の中、運転席から誰か飛び出す。


「すまない!大丈夫かい⁉」


本当に申し訳ない、と雨の音に掻き消されそうな声を張り上げて、その人は迷いなくこちらに走ってきた。