左側の頬骨を上げて呆れた表情を作る梓。「んな事聞いてねーよ」とばっさり切り捨てられて、目の前の席に座る。そこは確か斎藤君の席だ。青春のニキビに色黒の肌。丸い目元に五分刈りの頭。いつでも笑顔を絶やさない斎藤君。

「斎藤はどうでもいいから」

梓の呆れた声にあたしも頷いた。口に出てたか。恐ろしい。
梓は綺麗な茶色の髪を指先でくるりと回した。
梓は綺麗だ。今時の女子高生は何食ったらこんな体型になるのか問い合わせたい。スラリとした長い足。細い指先に乗っかる形良い爪。
そう、決して地味じゃない容姿にこの堂々とした空気を持つ彼女。何故あたしの友達なのかはよく分からない。はっきり言ってしまえばタイプが違うのだ。