【完】『遠き都へ』

種崎から海岸沿いに走ると飛行場がある。

理一郎とセイラが大介の車で飛行場に着いたのは、少しフライトまで間があるタイミングであった。

「…東京に、やっぱり戻るんかや」

「仕事もあるしな」

「まぁまた帰って来いや。おまんがおらんと暇で仕方がないきに」

大介は底抜けに明るい言い方をした。

「セイラちゃんも、今度は混浴の温泉場つれてっちゃるき」

「混浴はイヤだな」

セイラは笑った。

「こいつ、ちーと線の細いとこのありゆうきに、しっかり頼む」

「オッケー」

東京行のアナウンスが流れる。

「じゃあ」

「おぅ」

互いに手を振ると、ゲートへ理一郎とセイラは消えた。

手続きが済むと、案内に誘われるまま機内に乗り込み、窓をふと眺めた。

すると。

どういう訳か展望用の窓際に、あゆみと優姫の姿があったのである。

何かを叫んでいるようだが分からない。

離陸を報せる声がする。

少し動いた。

ふわっ、と機体が浮いて、機体は東京へ向かって飛び始めた。

セイラは隣の理一郎を見た。

小さなノートのようなスケッチブックを取り出し、何やら描き始めている。

鞄に入れたまま高知にいる間には出すこともなかったスケッチブックである。

「…お城?」

見ると天守閣のような画と、いくつかの人物のデッサン画がえがかれてある。

「…イメージ忘れないうちに描いとこうと思って」

どうやら、新作のスケッチらしい。

「…理一っちゃんさ」

「ん?」

「優姫ちゃん、いい子だったね」

「いい子だったね」

「優姫ちゃんのこと描くの?」

「いや描かない」

でも高知を舞台に何か描くつもりではあるらしい。

「…ちょっとは、良く描かないとな」

おもはゆそうに理一郎は言った。

既に陽は高い。

飛行機は土佐湾から紀伊水道を目指し、東へ向かってフライトを続けてゆく。

寝不足気味のセイラは、理一郎がスケッチを始めると、まるで遊び疲れた子供のようにウトウトと仮眠をとり始めた。





(完)