「強い魔力・・・?」


〈ああ。お前は人間だけど、他の人よりも俺たち使者の気配を感じ取れる体質なんだろう。
 ラックの強い魔力にひかれて、俺たちが“みえる”ようになったんだ〉


「やっぱり俺しか見えてないのか・・・。だから紗季は・・・」


〈ふーん。見かけによらず、理解力はあるんだな〉


「お前に言われたくねぇよ」


修平の切り返しにリーフは口を尖らせる。
そんなやり取りを、ラックは壁にもたれて聞いていた。

すると突然、リーフが修平の肩越しに後ろを見つめた。


〈ラック・・・?〉


「え・・・?」


修平は後ろを振り返った。


誰もいない廊下に、リーフが話しかけたようにしかみえなかった。


だけど、次第に廊下の曲がり角が透けるように、そこにしゃがみこんだラックの姿を見た。


「お前・・・“ラック”?」


〈しゅう・・・へい?〉


顔をあげて修平を見るラックに、リーフは駆け寄った。


〈ラック・・・。聞いてたのか?〉


〈・・・なぁ、リーフ。今の話、なんだよ〉


〈今のは・・・〉


〈僕が“強い魔力”を持つってなんのことだよ〉


修平から目をはなし、リーフを怯えた目で見つめるラックに、リーフは何もいえなかった。


そんな2人を見て、修平は思った。


ラックが強い力を持つことを、ラック自身は知らないといった感じだ。


それなのに、どうしてリーフはそう言い切るんだろうか。


その“強い魔力”を、修平は見てみたいと思った。


〈馬鹿にしてんだろ・・・?リーフみたいに魔法の持続がないから・・・〉


〈違うんだ。お前がそう思いこんでるだけで・・・〉


〈僕にはリーフみたいに力がないんだ。本人が言うんだ。そんな強い力なんてあるもんか!!〉


「あ・・おい、ラック!・・・お前、追いかけなくていいのか?」


その場を飛び出したラックを、リーフは追いかけようとはしなかった。


〈・・・俺の気持ちも考えないで・・・。信じないならその“力”をくれよ。
 俺が持っていたら、絶対無駄にはしないのに・・・〉