「オレ、X.Y.Z~」


「じゃ、あたし、バラライカ」


望月とリアナがカウンターの中にいるオレに声をかける。


「オレは……ロングアイランドアイスティーで」

とアイちゃん。


「ロングアイランド……って、却下。んな複雑なもんできねぇから」


「あはは……。じゃ、フォアローゼズ、ストレートで」


「へいへい……って、何でさっきからオレが作ってんの! 本業のヤツがここにいんだろ」


オレはパシンとカウンターを叩いて、目の前にいるアイちゃんに抗議した。


「え~。だってオレ、休みに仕事すんのヤダもん。それにマヒロ君の作ったお酒、結構いけるよ? バーテンに転職すれば?」


テーブルに頬杖ついて、全く悪びれる様子もないアイちゃん。


「そりゃ、どーも」


気のない返事を返して、肩をすくめた。

今オレらがいるのは、アイちゃんの勤め先である、バー“Adonis”。

店を休業して、マスターは只今ドバイ旅行を満喫中だとか……。

優雅なもんだよ……。


マスターが留守の間、店の鍵はアイちゃんが預かっているらしい。


「それにしても、勝手に店入って、酒飲んでいいわけ?」