その瞬間、ボキッと言う枝が折れるような音が響いた。
「ぐッ……!」
裕太がくぐもった声を上げ、顔をしかめる。
とぼけた顔の七福神を見て、指を折ったのだと気づいた。
「大丈夫? 裕太っ……!」
慌てて裕太の元へ駆け寄ろうとしたが、七福神がナイフを突き出してきた。
座れ、と目で合図する。
わたしは仕方なく椅子に座り直した。
「ゲームはまだ終わっておらんよ。無事に終わらせたいなら、席を立たないことだ。何があってもな」
ニヤリとする七福神を睨みつけることしか出来ない。
裕太は歯を食いしばり、苦痛に耐えている。
どこの指を折られたのだろうか……せめて、小指であって欲しい。
七福神はさらに、裕太の背後に立ったまま何かをしている。
「お前、さっき自分の言ったことを覚えてるか? 指の一本や二本、くれてやるって……」
「ぐわぁッ!」
突然、裕太が悲鳴を上げた。
何をされたの……?
目を瞑り苦痛に喘ぐ裕太が心配になり、わたしはテーブルの上で両手を意味もなく動かした。
「チッ、このナイフじゃ切れんな……。工具を取りに行って来るから動くなよ、お嬢さん」
わたしに血がついたナイフを向けた後、七福神は部屋から出て行った。
工具……指を切り落とす工具だろうか?
わたしはたまらず椅子から立ち上がり、裕太の傍に駆け寄った。
背後に回ると、右手の中指から血が流れていた。
親指は不自然に曲がっている。
「裕太……。ねぇ、逃げよう! このままじゃ指を切り落とされちゃうよ」
半泣きになりながら、テーブルに突っ伏している裕太に訴えた。
荒い呼吸と呻き声を漏らし、痛みと戦っている彼に……。
わたしは裕太の手の拘束を外そうとした。
「……ッ、やめろ」
低い声だが、ハッキリとそう言った。
わたしは思わず動きを止め、信じられない思いで裕太を見つめた。
「何で? 逃げなきゃ殺されるかもしれないんだよ!」
「逃げても無駄だ……。すぐに捕まる。何で俺がこんな役目を買って出たか、察しろよ……」
突っ伏したまま、苦しそうに言う。
逃げても無駄……その言葉はあまりにも悲観的に響いた。
裕太はわたしを守るために犠牲になったのに、わたしは自分のことしか考えていなかった。
「ありがとう、裕太。ごめんなさい……」
テーブルに涙が落ちるのも構わずに、わたしは泣き続けた。
相変わらずわたしの方を見ようとはしないが、以前のような優しさが失われていないことが分かって心から安堵した。



