あたしは覚めた、コーヒーを口へと運ぶ。


静かな部屋に「ゴクン」と、喉を通るコーヒーの音が、やけに耳に響いた気がした。


「そうだよ。ただの事故」


椿がこれ以上、気にしないように言う。


でも、誰も知らない真実がある。


あたしは、それを誰かに言うつもりはこれから先もない。


「服と化粧品だよね」


椿は何かを誤魔化すように煙草を消し、立ち上がる。


ごめん、椿。


でも、椿にも言えないんだ。


だって、あれはお母さんとの最初で最後の約束だから、、、。


椿はクローゼットから、何着かの服を取り、化粧品たちと鞄に詰め込んだ。


あたしは椿からそれらを受け取り、そのまま椿の家を出た。