そんなあたしのことを、男は呼び止める。


「リン」


呼び止められ、あたしは男を睨む。


でも男は呼び止めておきながら、何も言おうとしない。


「用がないなら、わざわざ呼び止めないで」


そう言い残し、今度こそ部屋を出た。


早くこの建物から、立ち去りたい。


「リン」


そう思っているのに、また呼び止められる。


「何」

「相変わらず、素っ気ねぇ奴だな。久しぶりの再会だって言うのに」


何が、久しぶりの再会よ。


2、3週間前に、会ったじゃんない。


「親父からの任務命令か?」


親父とは、さっきの男のことだ。


そして今話しかけてきた男は、兄の楓(かえで)。