「あ、織くん!」 学年も違うから滅多に会うこともなく、放課後。 織くんの姿を探していたら、一階の廊下で部活のジャージ姿の織くんを発見。 「紗英子さん」 あたしを見つけて、笑ってくれた。 「あ、これこの前のジャージ!」 「うん、わざわざありがとう」 「ううんあたしのほうこそ」 嬉しかったよ、すごく。 「紗英子さん、今帰り?」 「えっ……うん」 「そっか。気をつけて」 ――それだけ? そう言ってすれ違おうとした織くんのジャージの裾を、思い切って掴んだ。