妄想が終わったあたしの目の前には、眉を下げた織くん。 ああ、あたしのバカ。 こんな顔をさせたいわけじゃないのに。 「……織くん、ごめんね」 「え?」 お玉を置いて、振り向き様に織くんの首に腕を巻き付けた。 「……紗英子さん?」 「ちょっと、ムカついちゃっただけなの」 「え?ムカついた?」 「うん……織くんが、織くんのことが大好きなあたしをバカにするから」 本当は、そんなんじゃないのかも。 照れくさかっただけなのかもしれないね。