真剣な顔に、戸惑った。 それは多部先輩が、紗英子さんのことを好きだから? 聞けない言葉を呑み込んで、にっこりと笑った。 「そんなこと、聞きたくないです」 「お前、」 「じゃあ俺行くんで」 何か言い掛けたのを遮る。本当に性格悪いな、俺。 「おい、待てよ緒方」 背中に聞こえた声に、動きを止める。 「……なんですか?」 「紗英子と真剣に付き合ってなかったりしたら、許さねぇからな」