「ごめん。付き合えない」 聞いたことのある声が聞こえた。 この声は……。 「どうしてっ?彼女、いないよね?」 「好きな子がいるんだ」 申し訳なさそうにそう言うのは、紛れもなく多部先輩で。 “好きな子”それが誰かなんて、俺にはすぐにわかった。 だから――……。 「……お前、何してんの?」 冷たい声が俺に向けられる。 それを故意に無視して、泣きそうな顔で走り去っていく女の子とすれ違った。 俺は、告白の現場から速く立ち去るどころか、堂々と立ち聞きしていた。