「紗英子さんが?」 「本当におかしな人よね。あの人には全然関係ないことなのに」 「……紗英子さんはそういう人だよ」 思わず頬が緩む。 「だから好きになったのね」 朱音の言葉に顔を上げると、今までで見たことがないくらい優しい笑顔だった。 「……朱音、俺」 「今日で織のことは諦めるわ」 「え?」 「紗英子先輩には、勝てないから」 話はそれだけだから、と朱音は立ち上がって教室を出て行った。