誰かが見ているわけでもないのに、そーっと歩いていると。



「紗英子さん?」



あたしの大好きな声が聞こえた。



いつもなら嬉しいんだけど、今はちょっと……。



タラリと背中に汗が流れるのを感じながら、振り向く。



「……し、織くんお疲れ様」



「お疲れ様、じゃないよ」



えぇ!?違った!?



一瞬笑った織くんは、すぐにあたしのところにやってきた。



――目が、目が笑ってないっ!