「……お邪魔します」 遠慮がちにそう言う、織くんがいるから。 ――あ。織くんが緊張してる。 声だけでわかる、織くんの気持ち。 あたし重症かも。 「あらっもう紗英子ー?お友達連れてくるなら、電話一本くらい入れなさいよー」 ハイテンションでうふふ、と笑うお母さん。 ――こちら、かなりのイケメン好き。 電話しなかったのは悪いけど。 織くんは友達じゃ、ないもん。 ちょっと拗ねて織くんを見ると、優しく微笑みかえされた。