あたしは今、駅前の駐車場にいる。

涼ちゃんとの待ち合わせの為だ。

あたしの学校の最寄り駅から3つ先にあるこの駅。

電車でならすぐかもしれないけど、あたしは自転車で来た。

自転車通学のあたしは、電車より自転車の方が乗り慣れているから。


でも……


「3駅って、意外と遠かったなぁ」


あたしは『ふう~』と、長く息を吐いた。

それでも、待ち合わせの時刻より15分早く到着できた。


「涼ちゃんは……まだ来とらんみたいじゃね……」


あたしは、ほっと胸をなでおろした。

15分もあれば息を整え、髪を直すことも十分できる。

あたしは、深呼吸をすると、鞄から鏡を取り出した。

あたしの周りには、あたしと同じように鏡を見つめたり、落ち着かない様子で時計を見ている人たちがいる。

この人たちも、きっと待ち合わせなのだろう。

ここは、あまり大きくない駅だけど、大学からは一番近い駅なので、待ち合わせに利用する人は多いようだった。


「涼ちゃん、早く来んかな~」


髪をセットし終わったあたしは、つぶやきながら鏡をしまった。

意味もなく、横に停めたあたしの自転車のベルを指ではじいてみる。


ベルは、あたしの心を落ち着けるかのように、澄んだ音色を奏でてくれた。