ああ、これは悪い夢だ。
 私は夢を見ているんだ。



青はそう繰り返した。
唇が微かに動きながら、
その言葉の輪郭を象ってゆく。



 「パーティーだ!」



眼球を血走らせ、
白く尖った歯を剥き出しにして
張り上げた声は、低く掠れている。



青は息を呑んだ。
少し狭まった視界に、
手放した自分の見慣れた身体が
踊るように飛び跳ねるのが見えて、
背筋がぶるっと震える。



視界に青白い血管を浮き出させた細い指が、
泣き叫ぶ人間の髪を容赦なく掴む。


 ぶちっ。


嫌な音がして、掴まれた人間が
顔面ごと床に墜落したのが見えた。



見慣れた白い指の間には、
頭皮を離れた数本の髪の毛が絡みついていて、
指はそれを鬱陶しそうに振り払っている。



足下ではひくひく。と
人間が痙攣でも起こしたみたいに
原型も分からないほど
顔を歪ませて薄く呼吸をしている。



視界がそれを捕らえ、
薄汚れた上履きに包まれた白いハイソックスの脚が、
ターゲット目掛けて
思いきり振り下ろされた。




 嗚呼、まるで地獄絵図。




青は、ぎゅっと眼を瞑った。