【栞里side】




「っえぇぇえー!!!??結婚!?」




目の前に置かれたダイヤの指輪に驚く。






山内 栞里、17歳。

私は今、人生の選択を迫られているのだ。











ーーーカチャッ



「ああ」





蓮はティーカップを静かに戻し、冷静に、そして真っ直ぐに私を見つめる。

























「っ…そんな…いきなり結婚とか考えられないよ、まだ高2だし」







……………














ーープロポーズ。


女の子なら誰しも憧れるだろう。







好きな人と、ずっとずっと一緒にいるための大切な約束。












もちろん、蓮のことは好き。


ずっと一緒にいたい。














………だけど。














私にはまだやりたいこともやるべきこともたくさんある。









「もちろん、無理強いはしないよ」



「………」



















「ただ、少し考えて欲しい」








ーー………









実はね、と蓮は話を始めた。











「…将来、僕は父の会社を継ごうと考えているんだ。」












しかし、その会社はアメリカにあること。






来月にでもアメリカに行こうと考えていること。






そして……











その時には私にもついて来て欲しいこと。











…………




「来月か…早いね」







現実離れしていて頭がついていかない。















結婚、か。






確かに蓮のお父さんの会社はアメリカでも評判がいい。





蓮も実際お坊ちゃんという感じで。











だから、お金には困らないだろう。









……………















でも、私は…

大切なものが、思い出たくさんある。



この日本に、数え切れないくらいの。











高校の友達。


中学の同級生。


いっつも叱られた先生。


離れて暮らす、おじいちゃんとおばあちゃん。





大好きな親友、あず。












私の、掛け替えのない宝物。

それを置いて行くことは出来るのだろうか。








ーーー………














「来月の6日には出発する。栞里が結婚を受け入れてくれるのなら、再来週までには籍をいれたい」





……………







「じゃあ、次の講義まで時間がないから、これは置いて行く。栞里が持っていてくれ」

「…分かった、また後でね」









蓮は私の額にそっとキスをして、カフェ代を置いて、足早に店を出た。




…………










目の前の結婚指輪。



何カラットだろうか。



ものすごくキラキラしてる。










「…ハァ」












あまりにも綺麗すぎて

夢の中にでもいるようで。










「こんな綺麗なの、似合わないよ…」





ため息混じりに呟く。








けれどその声は、ガヤガヤとした店内に

静かに溶けていった。