ーー………





何がしたいの。













何がそんなに不満なの。





きーたんがいる。













それだけで十分じゃない。








私の世界はそれで満ち足りていたはずだった。


友達と部活ときーたん。












それなのに


何か足りなくて。







でもその答えを見つけたら



私が私じゃなくなる。




そんな気がして。














ぐるぐるぐるぐる。




これは一体なんていう感情だろう。









ーー……









家までの道。



こんなに長いなんて知らなかった。









……………









「ただいま」


「あー、お姉ちゃんおかえりー。
荷物届いてたよ」








そう言う妹をスルーして



足早に部屋に向かう。









ーーガチャンッ

















…そういえばきーたんのドラマCD



頼んだんだっけ。














机の上に置かれた包みを開けて


CDを取り出す。













…………








ーー『恋時間』



男女交際が禁じられている

聖リベイル中央学園。





そこで出会った主人公と

同じクラスの日凪森 朔弥。







人目を避けて二人で話せるのは

部活動で教室がからになる放課後だけ。











二人の大切な、恋の時間ーーー














《今回はダミーヘッドマイクを使った

緊張感あふれる二人だけの時間》


……か。









「さっそく聞かなきゃー」







なんて。



大きな独り言を言ってみたりして。















ラジカセにイヤホンをさして


再生されるのを待つ。










……………








『…ずっと、二人でいたい』











きーたんの少し低めの声。












言われるのは

ドキドキするような甘い言葉ばかり。




















ーーーなのに。


















「…ック……ヒック…」

















…涙が出るのは何故だろう?
















ドキドキしたり




キュンキュンして




「きゃーっきーたぁぁぁあん♡」



なんて一人で叫んで。

















それが本来の私じゃない。

















なのに















きーたんの甘い言葉を聞いても








全然ドキドキしなくって。














思い出されるのは











あいつの顔だけで。
















「………」











わけがわからなくなって












私は静かに泣き続けた。