ーー……





そしてよくわからないまま三日が過ぎた。





川崎は…





「ねぇねぇ、これこれ」





雑誌を両開きで目の前に広げてきた。



…真っ暗。






「いや、見えない」


「ああっ、ごめん」





コレ、と川崎が指差した先には。








きっ…きーたん!?!?!?








「なんで川崎が持ってんの!?」



興奮気味に雑誌に目を通す。





「言ったろ!協力する、って!」


誇らしげに笑う川崎。



いや…そうだけど…











ーーー…あの日。


告白をされて。


振って。


協力すると言われて。


よくわからないまま、駅まで


一緒に帰ることになった。





「じゃあ、谷ヶ崎の好きな人、教えてくれないかな」





川崎が手にしてるのは小さな手帳。






…事情聴取をするつもりなのか。












張り切っちゃってるし









ーー川崎なら、私がオタクでも引かないだろう。









そう思って。












「せ、声優の北瀬結衣って人…」



えぇえ!と、あからさまに驚く川崎。







「北瀬さんって、あの北瀬さんだよね!?」




どの北瀬さんだ、とツッコミたくなる気持ちはしまって。






「知ってるの?」

「僕らの紡ぎ歌に出てた!」

「あー、それそれ」






川崎も知っていたようで



いつしか盛り上がっていた。






ーー……



「で、北瀬さんのどんなところが好きなの?」

「えーっと…」














そして。


渋々、答え始めたが。





ーー………











「でねっ、きーたんの声は、それはそれはもう優しくて甘くて溶けるような感じで!!」



気がつけば熱く語っていたのは私で。





「ふっ」


「え、ちょ、なんで笑うの」







川崎はだって、といいながら、特徴である八重歯を見せ笑った。







「谷ヶ崎ってクールなイメージがあったけど、結構乙女なんだね」



……。



恥ず。





「いいじゃん。別に…きーたんのことも話せるの栞里と川崎しかいないんだから」


「栞里さんっていつも一緒にいる子?」


「うん」


「北瀬さんのことは、僕に語っていいよ」

「いいの?」






もちろん、と川崎は微笑んだ。




「だって谷ヶ崎のイメージだと、語れる人いないでしょ?」



そう、いじわるそうに笑う。








「ほんとはオタク全開でいきたいけどさー…オタクって引かれそうじゃん?」


「そうかな」


「うん。キャラも大切だしね」












クラスでのキャラというものはとても大切、ということはわかってもらえるだろうか。










その…なんというか…













クラスには一人や二人、オタクはいるものだけれど。


その子たちは一目置かれている状態で。














…悪い意味で。




だからオタクということを明かすわけにはいかない。









ましてやイメージがクールなどという私が明かすことはもってのほかで。